普通って何?治るって何? 芥川賞受賞作品「コンビニ人間」の書評

いわゆる社会的少数派(マイノリティ)の本です。自覚がある人、生きづらく感じている人には何かしら感じるものがあるかもしれません。

疎外感を感じたことがない人、要領よく生きている人には響かないかもしれません。読む人の境遇によって感想も違ってきます。

でも、個人的に、とても面白い本だと最初に言っておきます。

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1.コンビニ人間とは

コンビニ

著者は小説家、エッセイストの村田沙耶香。

大学在学中に群像新人文学賞優秀賞を受賞し、小説家デビューします。大学時代から始めたコンビニバイトの経験を活かし、コンビニ人間を執筆。

2016年に芥川賞を受賞したこの作品は、賛否両論を呼んで一躍話題になりました。

主人公は、大学時代から18年間コンビニでアルバイトをしている恵子。

幼いころから人と違った彼女は、常識外れな言動で周囲を戸惑わせていました。

どう生きるのが正解なのか分からない彼女を救ったのは、コンビニのアルバイト。

すべてにマニュアルがあるので、マニュアル通りに動いていれば、自分は社会の歯車になれると知ったのです。

以来、コンビニ店員として働く恵子でしたが、年齢を重ねるにつれ、人にこう聞かれることが多くなります。

「なぜバイトなの?」「恋人はいないの?」「結婚はしないの?」他で働く気はなく、恋愛や結婚に無関心な彼女は困ってしまいます。

そんなとき現れたのは新人バイトの男。彼の登場によって、恵子の生活が変わっていくのでした。

●縄文時代男・白羽

責める

“「この世界は異物を認めない。僕はずっとそれに苦しんできたんだ」”

35歳の新人アルバイト白羽は正社員で働いたことがなく、恋愛未経験、女性関係ゼロの男。

バイトは長続きせず辞めた彼に、恵子はバッタリ再会します。

何となく入った喫茶店で彼がこぼしたのが、この引用文です。

縄文時代から、日本は何も変わっていないと語ります。

狩りをしない男、子供を産まない女はムラの役立たずになり、排除される。

「人間は社会か家庭、どちらかに属しているべき」という考えが圧倒的に多いなか、少数派という点では恵子と白羽は似ています。

●妹とのズレ

激昂

“「お姉ちゃんは、いつになったら治るの……?」”

利害の一致で白羽と同居することになった恵子。

妹に男性と住んでいることを話すと、とても喜んでくれました。バイト仲間や友人たちからも祝福され、恵子は家に男がいるというだけで変人扱いされなくなる状況に拍子抜けします。

そして、遊びに来た妹に本当のことを話したとき、妹からこぼれる言葉が、この引用文です。

恵子は、というか私もですが、妹は姉のことを理解しているものだと思っていました。

36歳で恋愛経験のない、最もな理由を一緒に考えてくれたのは妹だったから。

なのに、この同居がただのカモフラージュだと聞いた妹は激昂。

その場は白羽の気転で収まりましたが、多少なりとも恵子はショックだったのではと思います。

2.まとめ

恵子は地球に来たばかりの宇宙人のような印象です。

地球人にうまく変身するには、人間を観察して真似をしなければいけません。

恵子も、30代女性の服や髪型、喋り方、思考が分からず同僚の真似をしています。

コンビニマニュアルのように、生き方にもマニュアルや教科書があれば、少数派で傷付く人は減るのでしょうか。

考えさせられる一冊です。

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