食に関する情報番組や雑誌で見かける管理栄養士という資格。
なんとなく凄そうな資格だけど、具体的にどんな仕事をしているのでしょうか?
そもそも栄養士と何が違うのでしょうか?
具体的な仕事内容や仕事場による業務の特徴、給与事情などを紹介していきます。
目次
1.管理栄養士の仕事
管理栄養士の仕事内容は具体的にどんなものなのでしょうか?
栄養士との違いも含めて見ていきましょう。
1-1.栄養士との違い
管理栄養士と栄養士の違いは大きく分けて3つあります。
①指導対象者の違い
栄養士は主に健康な人々を対象に栄養指導や給食管理を行うのに対して、管理栄養士は健康な人々に加え、傷病者・療養者に対する栄養指導や給食管理を行います。
②施設の違い
特別な栄養管理が必要な施設や、給食提供数の多い施設には管理栄養士の必置義務があります。
栄養士・管理栄養士の配置に関しては、さまざまな法令によって必置義務・努力義務が定められてます。
必置義務は必ず配置しなければならない事を意味し、努力義務は配置するよう努める義務がある事を意味しています。
管理栄養士の必置義務がある施設は以下の通りです。
- 「医学的な管理を必要とする者に食事を供給する特定給食施設にあって継続的に1回300食以上または1日750食以上の食事を供給するもの(1号施設)」
- 「1号施設以外で管理栄養士による特別な栄養管理を必要とし、継続的に1回500食以上または1日1500食以上提供する特定給食施設」
※特定給食施設:継続的に1回100食以上または1日250食以上提供する給食施設
③資格
資格の種類はどちらも国家資格(名称独占資格)に分類されます。
栄養士免許は、厚生労働大臣の指定した栄養士養成施設にて2年以上、栄養士として必要な知識・技術を習得した者に対して都道府県知事が与えます。
管理栄養士免許は、管理栄養士国家試験に合格した者に対して厚生労働大臣が与えます。
また、管理栄養士国家試験を受けるには受験資格を満たすことが条件となります。
1-2.治療・療養目的での栄養指導・給食管理
病院や高齢者施設などで、医師の指示のもとで治療・療養を目的とした栄養指導・給食管理を行います。
対象者の体質や症状に合わせて目的の為に必要な栄養管理を行うため、専門的な知識や技術を要します。
身体のメカニズムや様々な疾患の成り立ちへの理解、検査値結果を読み取る力等が要求されます。
1-3.特定保健指導
特定健診の結果をもとに、生活習慣病の発症リスクが高く、生活習慣の改善によって予防効果が期待できる方に対して、専門スタッフ(保健士や管理栄養士など)が支援を行います。
(特定健診とは・・・生活習慣病予防目的の為、40~74歳の方を対象にメタボリックシンドロームに着目した健診)
対象者のリスクレベルに合わせて、
- 情報提供(簡単な食事・運動のアドバイス
- 疾患リスクの高い検査項目に関する知識の提供)
- 動機付け支援(対象者本人の意識改革につながる支援)
- 積極的支援(実践的な食事指導・運動指導)
などを行います。
2.選べる仕事場
管理栄養士は様々な人を対象に食事・栄養面から健康を支える仕事をしています。
仕事場によって具体的にどのような仕事をするのでしょうか?
2-1.医療現場
病院や診療所に所属し、患者の治療や予防を目的に栄養管理を行います。
医師・看護師・薬剤師など他職種と連携・協力するチーム医療の一員として働くため、高度な知識・技術が必要です。
他職種と情報を共有するため、コミュニケーション能力も重要となります。
日々の食事では、様々な疾患に対応した献立(治療食献立)を作成する必要があります。
治療食の種類や基準は施設の方針により定めます。
急患や様態の変化に対応できるよう在庫管理等も重要な業務となります。
また、栄養指導においても日々の献立は具体的な教材ともなる為、ただ栄養価を合わせるだけでなく、使用食品や調理法等も指導内容に沿ったものでなければなりません。
最近では歯科医院で働く管理栄養士も増えてきているようです。
今後も様々な医療現場での管理栄養士のニーズは高まりそうですね。
2-2.福祉施設
高齢者や障がいのある方を対象とした福祉施設に所属し、自立や機能低下の予防を目的とした栄養管理を行うことで、快適な生活が送れるよう支援します。
障がいや高齢による身体の機能低下から、食事をうまく噛めなかったり、飲み込みづらい方もいます。
対象者の機能に合わせ、食事の硬さや大きさ・飲み込みやすさに配慮した食事(介護食)を提供します。
また、食事量が少ない方には、少ない量でも十分な栄養がとれるように献立を工夫したり、食欲が出るような食環境を整えます。
口から食べる事の出来ない患者に対しては、鼻や腸からチューブを通す経管栄養法による栄養補給があります。
医師・看護師・介護士など他職種と連携し、対象者の心身の健康と尊厳を守れる食事方法を提案する事が、本人やその家族にとって重要です。
2-3.学校給食
小中学校や夜間定時制高校に勤務し、給食の献立作成・提供をします。
また、教員や地域の人々と連携して食育の授業を行ったり、給食だより等で食に関する情報提供を行ったりもします。
他にも、食物アレルギーへの個別対応や、肥満・糖尿病などの個別指導を担当することもあります。
2-4.食品メーカー
企業に就職し、商品開発や営業・販売業務などに携わります。
中でも商品開発は高度な知識やクリエイティブな発想が必要とされます。
また利益のでる商品を開発しなければならないため、おいしさだけでなく、商品売価に見合った原料を選定する等、コスト感覚も重要となります。
メーカーへの就職は狭き門と言われていますが、その分とてもやりがいがありそうですよね。
2-5.スポーツ関連施設
アスリート養成施設での栄養指導・管理や、スポーツジムでの栄養アドバイス等を行います。
運動能力の向上・免疫力向上・ボディメイク等、様々な目的をもつ方を栄養面からサポートします。
以前からスポーツ団体からのニーズは高かったようですが、その活躍の場は少なく、狭き門と言われてました。
しかし、最近ではパーソナルトレーニングジムの普及により管理栄養士の需要は高まりつつあります。
身体能力の向上や美容において食事を重視する人々が増えたという事実は、これから活躍する管理栄養士にとって朗報ではないでしょうか。
2-6.その他
メディアへの出演や本の執筆・セミナー講師等、独立してフリーで働く管理栄養士も目立ってきました。
これまで仕事場ごとの特徴を記してきましたが、団体に属することで業務への縛りも出てきます。
自分の得意な専門分野を武器にして、すべて自己責任で収入を得る、そんな働き方をしたい方に向いているのかもしれませんね。
3.給料について
仕事場によって様々な活躍が期待できそうですが、給料はどのくらいなのでしょうか。
大手求人サイトによると、民間の医療福祉関係で働く管理栄養士の平均年収は288万円。
年齢別にみると、20代で268万円、30代で331万円、40代で372万円、50代で355万円となるようです。食品メーカーでの商品開発での平均は312万円、品質管理での平均は352万円。
国税庁の調査によると、日本人の平均年収は420万円(平成27年)なので、低めの給料設定のように感じます。
ただ、仕事場によって給料の幅があるようなので、選択によっては納得の給料を得られるかもしれませんね。
4.まとめ
管理栄養士は、様々な目的の為に栄養面からサポートする仕事ということがわかりました。
食に関する幅広い知識をもった者に与えられる資格ですが、さらに専門性を磨くことで収入アップも期待できそうです。
資格取得がゴールではなく、そこからどんな分野に特化して活躍していくのか?自分を成長させてくれる、そんな素敵な資格なのかもしれません。
【参考サイト】
キャリアガーデン http://careergarden.jp
厚生労働省 http://www.mhlw.go.jp
ウィキペディア https://ja.wikipedia.org
日本栄養士会 https://www.dietitian.or.jp
イーガブ http://elaws.e-gov.go.jp
リクナビネクスト https://next.rikunabi.com