高齢化や生活習慣病の増加に伴い、栄養面から健康を支える管理栄養士のニーズは高まりつつあります。
管理栄養士になるにはどのような方法があるのでしょうか?
資格の取り方・学び方をみていきましょう。
目次
1.管理栄養士になるには
管理栄養士は栄養士法に基づく国家資格であり、取得するには国家試験に合格する必要があります。
管理栄養士国家試験には受験資格が存在し、誰でも受けられる訳ではありません。
ここでは受験資格や難易度について紹介していきます。
1-1.受験資格について
受験資格を得る為のルートは大きく分けて2つ存在します。
栄養士法の記載内容を噛み砕いて説明しますので、詳細を知りたい方は参考サイト(厚生労働省・イーカブ)で確認してください。
◆実務経験不要のルート
・管理栄養士養成施設(修業年限4年)を卒業し、栄養士免許を取得した者
◆実務経験必須のルート
- 栄養士養成施設(修業年数2年)を卒業し、栄養士免許を取得後、栄養士としての実務経験が3年以上ある者
- 栄養士養成施設(修業年数3年)を卒業し、栄養士免許を取得後、栄養士としての実務経験が2年以上ある者
- 栄養士養成施設(修業年数4年)を卒業し、栄養士免許を取得後、栄養士としての実務経験が1年以上ある者
上記いずれか1つに該当すれば受験資格があります。
栄養士免許を保有していることが絶対で、栄養士免許を取得したプロセスによって条件が変わります。
1-2.栄養士になるには
管理栄養士受験資格の絶対条件となる栄養士免許の取り方はどのような流れでしょうか。
栄養士免許は、栄養士養成施設か管理栄養士養成施設において2年以上修業し、栄養士必須科目単位の全てを修得した者に与えられます。
(これらの養成施設への受験資格は高校以上が条件です)
国家試験のない国家資格です。
養成施設に通って単位を修得し卒業すれば取得できます。
1-3.合格率と難易度
管理栄養士試験の合格基準は200点中120点以上です。過去5年分の合格率をまとめてみましょう。
- 第31回管理栄養士国家試験(平成29年) 合格率54.6%
- 第30回管理栄養士国家試験(平成28年) 合格率38.5%
- 第29回管理栄養士国家試験(平成27年) 合格率48.9%
- 第28回管理栄養士国家試験(平成26年) 合格率55.7%
- 第27回管理栄養士国家試験(平成25年) 合格率44.7%
過去5年平均で約48%とそんなに低くない合格率ですが、年によって落差が激しいですね。
さらに注目すべきは合格者の内訳です。
学校区分別に第31回の合格者内訳をみてみましょう。
- 管理栄養士養成施設(新卒) 受験者数9,425名 合格者数8,704名 合格率92.4%
- 管理栄養士養成施設(既卒) 受験者数1,918名 合格者数353名 合格率18.4%
- 栄養士養成施設(既卒) 受験者数8,129名 合格者数1,565名 合格率19.3%
ご覧の通り、合格者のほとんどは新卒です。
全体の合格率を見たら、他の国家試験に比べてそれ程難しい資格ではなさそうですが、既卒の方が独学で挑むとしたら、かなり難易度が高い試験ではないでしょうか。
2.自分に合った学び方
この記事を読んでいる方の中には、進路に悩む学生さんや、栄養士からのステップアップを考えている方もいると思います。
学び方による特徴を踏まえ、自分に合った資格の取り方を選択して頂ければと思います。
2-1.大学・専門学校で学ぶ
①受験までの最短ルート
管理栄養士養成施設の全ては、4年制大学か4年制の専門学校のどちらかです。
必須科目の全てを取得して卒業すると、栄養士資格・管理栄養士受験資格の両方を取得できます。
②受験対策が万全
多くの学校が合格率と受験対策を売りにしています。
その年の問題傾向と対策等の授業を設ける学校も多く存在し、合格を勝ち取る為のテクニックも学べます。
2-2.独学で学ぶ
①費用が安い
大学で学ぶ場合、4年間での平均費用は国公立で約250万円、私立で約430万円かかるそうです。
独学の場合は、栄養士養成学校の費用(2年間で約200万円)に加えて、通信教育等の受講料・教材費等がかかります。
通信教育の費用は約6万円~30万円と、内容や期間によってバラバラでした。
国公立と比べるとあまり差はないようですが、私立との差は歴然ですね。
②即戦力になる
独学で学ぼうとする方の多くは、栄養士として働きながら資格取得を目指す方ではないでしょうか?
合格率や学ぶ環境からみると、厳しい道のりになると思います。
しかし、同じ管理栄養士でも、実務経験がある人の方が業務においては絶対的に有利です!
知識と実績がある人の方が信頼されやすく、チームワークが要の業務はスムーズに進みやすいかもしれませんね。
3.管理栄養士になるメリット
頑張って管理栄養士の資格を取ったとして、どんなメリットがあるのか見ていきましょう。
3-1.活躍の場が広がる
栄養士は主に健康な人々を対象に栄養指導や給食管理を行いますが、管理栄養士は健康な人々に加え、傷病者・療養者に対する栄養指導や給食管理を行うことが出来ます。
生活習慣病予防を目的とした特定保健指導の業務等、ニーズの高まっている仕事での活躍が期待できそうですね。
3-2.収入アップが期待できる
勤め先にもよりますが、資格手当が支給される可能性が高いです。
頑張った分、給料に反映されるのは嬉しいですよね。
また、管理栄養士の経験と専門性を磨く事でキャリアアップが可能です。
例えば、医療機関にて糖尿病患者の栄養指導に尽力してきた場合、日本糖尿病療養指導士という認定資格を取ることも可能です。
他にも下記のような自分の専門性を証明する資格を併せ持つことでより良い条件の仕事に巡り会える可能性もあります。
- 福祉系で噛む力や飲み込みやすさに配慮した介護食分野を得意とするなら、摂食嚥下リハビリテーション栄養専門管理栄養士
- スポーツ系なら健康運動指導士等
注)3-2で紹介した各種資格は、管理栄養士資格保有の他に受験資格が存在します。興味のある方は巻末の参考サイトにてご確認ください。
4.まとめ
管理栄養士資格を取るには、管理栄養士国家試験に合格しなければならないことがわかりましたね。
また、国家試験を受ける為の受験資格が存在し、栄養士の資格を取得したプロセスによって条件が変わってくるのですね。
学び方によっては難易度の高い資格ですが、汎用性のある一生モノの資格です。
資格は知識と技術の証明ではありますが、ただ飾っていても意味がありません。
磨けば力強い剣となり、ピンチの時は自分を守る盾となる、仕事における自分らしさを表現する道具として管理栄養士という資格を活かせたら素晴らしいですね。
【参考サイト】
厚生労働省 http://www.mhlw.go.jp
ウィキペディア https://ja.wikipedia.org
日本栄養士会 https://www.dietitian.or.jp
イーカブ http://elaws.e-gov.go.jp
ユーキャン http://www.u-can.co.jp
管理栄養士の大学・短大偏差値 http://栄養士.net
キャリアガーデン http://careergarden.jp
一般社団法人日本糖尿病療養指導士認定機構 https://www.cdej.gr.jp