コンビニよりも数が多いと言われる歯科医院ですが、皆さんは何を基準に自分の通う歯科医院を選んでいますか?
通いやすさ・院内の雰囲気や設備も重要ですが、スタッフの質も気になりますよね。
今回は、「歯科衛生士」「歯科助手」について紹介していきます。
目次
1.歯科医院の業務分担
歯科医院で働くスタッフは「歯科医」「歯科衛生士」「歯科技工士」「歯科助手」「受付員」です。
それぞれどんな仕事をするのか、簡単に紹介していきます。
◆歯科医
歯科医師の国家資格を持ち、患者の治療にあたります。
◆歯科衛生士
歯科衛生士の国家資格を持ち、歯科医師の指示に従って診療補助やう蝕(虫歯)予防処置・歯科保健指導等を行います。
術者として、直接患者の口腔内に触れる資格を持ちます。
◆歯科技工士
歯科技工士の国家資格を持ち、義歯(入れ歯)・歯の詰め物・歯の被せ物を製作します。
◆歯科助手
術者を介助し、診療が円滑に行えるよう様々なサポートを行います。
◆受付
診療所内の総務的な作業を行います。主な業務は、患者登録・受付・アポイントメント・金銭取り扱い等が挙げられます。
歯科医院によっては、歯科技工士を雇わず、技工物(義歯・詰め物・被せ物)を技工所へ外部委託するところもあります。
また、受付員を歯科助手が兼務するところもあります。
2.歯科衛生士と歯科助手の違い
歯科医については、HPや歯科医院紹介サイト・院内掲示物での紹介等で情報を得やすいですが、歯科衛生士と歯科助手については見分けがつきませんよね。
資格の有無によって業務にどのような違いがあるのか、詳しく見ていきましょう。
2-1.資格の違い
歯科衛生士の資格は、歯科衛生士法によって定められた国家資格です。
歯科衛生士国家試験に合格した者が、厚生労働大臣から歯科衛生士免許を与えられます。
歯科医師の指導の下で、主に以下の業務を行うことができます。
- う蝕(虫歯)・口腔疾患の予防処置
- 歯科診療補助
- 歯科保健指導
詳しい内容については2-2.業務内容の違いで説明します。
対する歯科助手には、法律によって定められた資格はありません。
つまり、誰でもなることが出来ます。
しかし、術者の介助・診療の円滑なサポートがメイン業務となる為、必要な知識を身につけなければ仕事になりません。
全くの初心者を一から育てる歯科医院もあれば、即戦力を求める歯科医院もあります。
歯科助手には民間資格も存在する為、働きながら勉強する事に不安がある人や、目標が無いと勉強に身が入らない人などは、資格を取得するのも一つの手かもしれませんね。
2-2.業務内容の違い
それでは詳しい業務内容を見ていきましょう。
◆歯科衛生士
歯科衛生士法による歯科衛生士業務について、噛み砕いて説明します。
詳しく知りたい方は巻末の参考ページ(イーカブ・ヒョーロン)にて法令を確認してください。
歯科衛生士に許された処置は、治療処置ではなく予防処置です。
下記①~④の処置を医師の指導の下で行うことが出来ます。
①スケーリング(歯石除去)
歯の断面に付着した歯石を機械的に除去します。
- 歯ぐきから出ている歯の付着物又は沈着物除去
- 歯周ポケット(歯と歯ぐきの境目の隙間)の付着又は沈着物除去
歯石は自分で取ることが出来ず、中には細菌が居住しているため、健康な歯を守る為には定期的な除去が必要です。
②プラークコントロール(歯垢除去の徹底)
歯垢(プラーク)には虫歯の原因となる細菌が潜んでいます。
患者に口腔清掃を徹底してもらうことをプラークコントロールといいます。
主な方法はブラッシングで、術者が行うものと、患者が自分で行うものがあります。
③歯科診療補助
義歯や詰め物・被せ物を作る為の型取りや、歯や口腔に対しての薬物塗布などを行います。
④歯科保健指導
口腔ケアや生活指導を行います。
具体例として、高齢者の口腔ケア指導が挙げられます。
地域の高齢者に歯磨き指導や口腔マッサージを紹介したりします。
口腔内を良好に保つ事で、健康な歯を保つと共に、誤嚥性肺炎などの予防を目的としています。
- 誤嚥性肺炎とは…飲食物等の誤嚥によって細菌が肺に侵入し、炎症を起こす肺炎です。
- 誤嚥とは…食物や唾液は、口腔から咽頭と食道を経て胃へと送り込まれます。なんらかの理由により、食道ではなく気管に入ってしまう状態を誤嚥(ごえん)と呼びます。
その他にも、幼稚園・保育園・小学校では定期的に歯科健診で歯科医師とともに訪問することもあります。
歯や口腔の状態は「食べる」行為、すなわち「生きる」行為に関わる重要な要素です。
歯科衛生士は歯や口腔を疾患から守ることで、私たちの健康をサポートしているのですね。
◆歯科助手
歯科助手は直接診療する術者ではありません。
術者を介助し、診療が円滑に行えるよう様々なサポートをします。
主な業務内容をまとめました。
- 患者の誘導
- 器材の整理
- 術者の介助(バキューム操作や歯科材料の準備)
- 診療後の片付け
- 器具の消毒・滅菌
- 待合室や診療室の環境整備
受付員と兼務の場合は、総務的な業務も加わります。
一見、誰でも出来そうな業務ですが、「円滑な診療」のサポート役になる為には下記の能力が必要になるでしょう。
- コミュニケーション能力(患者を不安にさせない、スタッフ間の情報共有)
- 診療内容への理解(術者が次に何を行うのか?どの器材を使うのか?先を読む力)
- 手際の良さ(患者の負担を減らすためにも作業スピードは重要です)
- 感染予防への理解(血液・唾液・粘膜などに感染性があることを理解し、院内感染させないよう努める)
誰でもなれる歯科助手ですが、医療従事者としての自覚をしっかり持ち、相手に合わせて適切な対応が出来る人が向いてそうな仕事ですね。
3.見分ける方法
歯科衛生士と歯科助手には資格と業務内容に違いがあることがわかりました。
実際に歯科医院に行った際に、見分ける方法はあるのでしょうか?
3-1.仕事内容を観察する
業務内容を比べてみると、明確な違いがある事にお気づきでしょうか?
歯科衛生士は、疾患予防・診療補助の為に患者の口腔内に触れることを許されています。
歯科助手は、あくまでも「診療の介助」なので、口腔内に触れることはありません。
口の中で何かしらの作業をしている人は歯科助手では無いだろう、という判断が出来ます。
3-2.専門的な質問をしてみる
しかし、人件費削減目的の為に歯科衛生士の業務を歯科助手にやらせている歯科医院も沢山あるのが現状のようです。
衛生士なのか、助手なのか、直接訪ねてみても良いかもしれませんが、口裏を合わせている医院も存在します。
少し専門的な質問をして、明確な回答を得られるか試してみても良いかもしれませんね。
意地悪な行為に感じて遠慮してしまうかもしれませんが、大切な自身の口です。
必要な知識があり、国から許可を得た人に診てもらいたいものです。
3-3.出身校について聞いてみる
歯科衛生士の学校は全国に158校(2015年現在)あるそうですが、全てが3年制以上です。
個人情報なので、出身校名を無理に聞くのは良くないですが、「娘が衛生士さん目指してるのだけど、最初はどんなことを学ぶの?実習はどのくらいの期間あるの?」等、具体的な質問をしてみるのも良いかもしれません。
4.実際のところは…
3.見分ける方法でいくつかの案を紹介しましたが、歯科助手の方でも専門的な知識・技術を持っている方も沢山いるようなので、明確に見分けることは難しいでしょう。
また、歯科助手に許されていない処置であっても、練習すれば出来てしまう作業も実際にあります。
5.まとめ
歯科衛生士と歯科助手には、業務内容に大きな差があることがわかりました。
しかし、歯科医院によっては業務分担が明確にされていないところもあるようです。
歯科衛生士の業務は歯科衛生士法によって国から許された行為です。
資格のない者がその業務を行うことは違法にあたりますし、患者に対して嘘をついている事にもなります。
働いている人が自ら好んで嘘をついているとは考えづらく、多くは経営者の判断でしょう。
一度始まった歯科治療は継続して行われる事が多く、何度も通う事になります。
患者に対して誠実な歯科医院であるかどうか?信頼できるのか?こういった点も、自分に最適な歯科医院を選ぶ際の判断基準にして頂けたらと思います。
【参考サイト】
厚生労働省 http://www.mhlw.go.jp
イーカブ http://elaws.e-gov.go.
日本器官食道科学会 http://www.kishoku.gr.jp
キャリアガーデン http://careergarden.jp
ヒョーロン http://www.hyoron.co.jp/files/ndr/2015/kommentar/1503_kommentar.PDF
全国歯科衛生士教育協議会 http://www.kokuhoken.or.jp