乳幼児健診の保健指導や保育所、学校などでよく「食育」という言葉を耳にしませんか。
私は当初「栄養の取れた食事を勉強して子供を育てること?」くらいにしか考えていませんでした。
しかし、この食育という考え方、もっと深くて広い意味だったのです。
三大栄養素の勉強も「食育」、保育所のサツマイモ収穫体験も「食育」、給食献立の地産自消メニューもおせち料理の調理実習もお箸の持ち方も「食育」です。
「食」に関わるあらゆることが食育の一環みたいですよね。
でも、ほんとのところ食育ってなんなのでしょうか?子供たちや私たち親にどんなメリット、デメリットがあるのでしょう?
今回はそのあたりについて考えてみたいと思います。
1.食育とは
「食育」とは、「食育基本法」という法律にも定められている国の重要な政策の一つです。
その定義を説明すると、【さまざまな体験を通して「食」に関する知識とバランスのとれた「食」を選択する力を身につけて、健全な食生活を実践できる人間を育てること】だとされています。
この「食べる力」はすなわち「生きる力」に直結しています。
したがって「食育」は知恵を得たり(知育)、道徳心を育てたり(徳育)、体を鍛えたりする(体育)ことの一番大事な基礎ともいえるものなんですよ!というのが国の見解です。
現代社会では食事の欧米化や肥満・生活習慣病の増加、食品偽装の問題など「食」にまつわるさまざまな問題が取りざたされています。
そんな中を生き抜いていくための力を習得することが現代人の最重要課題、だから「食育」が叫ばれているのですね。
2.食育のメリット
「食育」によって学べることがすなわち、「食育」のメリットといえます。
たとえば「いただきます」「ごちそうさま」の精神。
食べ物に感謝する心は人間が自然に活かされていることへの気付きにもなり、作ってくれた人への感謝は社会性を育てることにも繋がります。
食育の定義でも話しましたが、食育はさまざまな体験を通して行われるものとされています。
学校の畑やプランターで野菜を育てたことがある、という方も多いのではないでしょうか。
この体験を通じて、好き嫌いを克服したり、農家の大変さを知ったり、どんな野菜が安全なのかを知ることができますよね。
私の子供が通っていた保育所では収穫したジャガイモを使って「いものこ汁」という地域の伝統食を作ったりしていました。アルミホイルで新ジャガの皮を剥くなどの調理体験だけでなく、炭水化物・たんぱく質などの栄養素を勉強したり、地域の食文化に触れたりと、とても総合的な学びを得させてもらいました。
また、「みんなと食べる食事は楽しい!」という経験は、子供の体のみならず心にもとても良い糧になったようです。
このように食育には「生き物への感謝」「栄養バランスのとれた食事の知識と実践」「心身の健康」「安全な食品を選ぶ力」「食文化の理解」などさまざまなメリットがあります。
3.食育のデメリット
「好き嫌いする少女の画像」(39)
食育の推進する考え方に「共食」というものがあります。
これは家族や友人、地域の人など誰かと一緒に同じ食卓を囲む、という意味なのですが、この「共食」の場がともすると子供に大きなストレスを与えてしまうことがあります。
分かりやすい例だと、食べ物の好き嫌いについての考え方。
Aさんの家では残さず食べることを家庭のしつけとして徹底している、Bさんの家では子供の偏食についてある程度大目に見ている、という場合、両者が同じ場で食事になったときどうなるでしょう。
AさんはBさんが好き嫌いしているのに納得できない(しつけが厳しい場合は「ずるい」と思うかもしれません)。
あるいは、BさんはAさんが嫌いなものをムリムリ食べている様子に楽しい雰囲気が台無しだと思うかもしれません。
これが、どちらかが主催のお食事会だともっと摩擦は大きくなってしまいます。
Aさんを学校給食として置き換えてみると分かりやすいですよね。
「食育」という考え方に「バランスのよい食を自ら選べる」という目標があります。
これに照らし合わせるとAさんの「残さず食べる」という方針は「食育」の考え方にきちんと沿ったものです。
ですが、子供がどうしても食べたくないものを無理強いしないBさんの考えも、子供の尊厳を守る意味で正しいものだといえます。
この問題を「家庭方針の違い」、いわば「価値観の違い」の問題として両者がそっと傍観できればよいのですが、そうもいかない人や施設もあるのでトラブルになってしまうことが少なからずあります。
3.まとめ
「食」は「生きること」に直結しています。
したがって「食育」は、心身の健康促進だけでなく、人が共に生きていくための社会性や生命への尊重といった道徳性、伝統食などの文化にまで関わってくる、とても範囲の広い考え方です。
「食」を通じてこれらさまざまな力を育むことができますが、一方で、「正しい食事」という考え方が子供の尊厳を傷つけてしまうこともあります。
あまりガチガチに考えず、子供のペースに合わせた食育を模索していくことが大切ですね。